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早瀬真人の崖っぷち日記
官能小説家、早瀬真人のブログです。官能小説、近況報告、日々雑言などなど、ゆるりゆるりとアップしていきたいと思います。
幽霊を見た !?(後編)
(続き)

「ねえ、もう出ようよ」
「・・・・・・うん」
ただならぬ気配を感じていた私たちは、
帰り支度を整えようと服を着だしたのですが、
その直後、とんでもない事態が発生しました。

突然浴室から、
シャワーの音が
鳴り響いてきたのです。

しかもポタポタという音ではなく、
ザァーッというけたたましい音。

私は壁際まで歩み寄り、浴室の電気をつけました。
室内からは浴室の様子を見れる
大きな曇りガラスがはめ込まれていて、
そこにぼんやりと人影が !?

「えっ !? あれ何っ !?」
女の子が小さな悲鳴をあげるなか、
私は浴室の扉を開け、中を覗きこんでみました。
すると、
白いワンピースを着た
長い黒髪の女性
が一人、
こちらに背中を向けて佇んでいたんです。

(嘘だろ?)
と思いながらも、私は勇気を振り絞って
「あのぉ・・・・・・どちら様でしょうか?」
と尋ねてみたのですが、返答はありません。
その女性はやや俯き加減で、
頭からシャワーの水を被ってずぶ濡れ状態。
私は一歩一歩近づき、
肩口からその女性の顔を覗きこんでみました。

顔面は唇まで、まるで蝋人形のように真っ白、
前髪の隙間から覗くガラス玉のような目を見た瞬間、
これまで経験したことのない恐怖が襲いかかりました。

(やべっ! これマジでやべえ!)
私は全身に鳥肌を立たせながら
女性から視線を外さないように後ずさり、
ドアから転げ出るように飛びだしたあと、
浴室の電気を消しました。

「今すぐここ出んぞ!」
「何を見たの !?」
「あとで話すから早く!」
女の子は指が震えてしまって、服のボタンがはめられません。
浴室の女が今にも扉を開けて出てきそうで、
私は女の子の手を引っぱり、その部屋から脱出しました。

フロントで事情を話して、
お金を返してもらいたかったのですが、
もちろんそんな余裕はなく、
逃げるようにそのホテルを後にしたのです。

あのとき私の見たものが何だったのか
その正体はよくわかりません。
ホテルの従業員が総出で私たちをドッキリにかけた、
あの浴室には隠し扉があり、そこを通って
従業員の一人が幽霊役を演じていたのかも、
などと考えたりもします。

身体に触ってみたらよかったんですけどね。
殴り飛ばしてみるとか。
さすがにそこまでの勇気は持てませんでした。

今から五年くらい前、
横浜で呑んだときにその話を友人に話したら、
「どこのホテルよ?」
という話になり、
微かに残る記憶を手がかりに探索したら、
そのホテル・・・まだありましたよ。
さらに汚くなっていて、なんとも不気味な佇まい。

真相解明するために、
もう一度挑戦してみたいという気持ちはあるんですが、
部屋番号は覚えてないし、
やっぱり無理でしょうね。
あんな恐怖体験は、一度だけで十分かも。
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