親父が死んだとき、
妹と部屋の整理をしていました。

妹は本棚の本を片づけていたんですが、
「あー、なんだこれ？」
と、突然素っ頓狂な声が。
どうやらエロビデオが五本ほど本の裏から出てきたようで、
とても古い、名前も知らない女優さんの、
いかにもヌルそうなAVでした。

妹はケラケラ笑いながら、
「どんなシーン見てたんだろ」とビデオをセット。
自分も妹のとなりに座ってしばらく鑑賞してたんだけど、
案の定ヌルすぎておもしろくもなんともないんです。
超ドＳの親父が女王様にいたぶられている生撮り映像なら、
最高に笑えたんですけどね。

仕方がないので妹をそのまま残し、
棚の整理に戻ったんですが、
今度は昭和三十年代のセックスのHowTo本が。
しかも写真図解入り。
ダッチワイフ相手に奮闘している
オッさんの姿がとても愉快でした。

「今度はこんなのが出てきたぞ！」
とゲラゲラ笑いながら妹に見せにいったら、
それまでニコニコしていた妹の表情が一変。
「何、これ？」
と、すご～く嫌そうな顔つきに。
どうやら彼女にとっては、
そちらのほうが生々しかったようで、
その場で本を放り投げてしまいました。

それから数年後、
今度は母親が私の元へやってきて、
「お父さん、変なビデオ持ってたのよ」
「あー。そういえばあったな」
「中身だけないんだけど、あんた知らない？」
「へ？」

誰かが持っていったとしたら妹しか考えられないんですが、
本人に確認を取っていないので、真相はわかりません。
もう忘れてるだろうし。
親父のエロビデオはいったいどこへ？